日本未熟児新生児学会雑誌 25(1):89-97;2013 印刷する
日本未熟児新生児学会雑誌 第25巻第1号 89~97頁(2013年)
体外循環による新生児急性血液浄化療法ガイドライン
日本未熟児新生児学会 医療提供体制検討委員会 新生児血液浄化療法ガイドライン作成小委員会
茨 聡(委員長)・和田尚弘・大曽根義輝・加藤英二・澤田真理子・長 和俊・徳久琢也・中澤祐介・早川昌弘・
廣間武彦・前出喜信・山本 裕・芳本誠司・楠田 聡(日本未熟児新生児学会 医療の標準化検討委員会委員長)
 新生児への急性血液浄化療法は,特別な器械や困難なバスキュラーアクセスを必要としない腹膜透析(peritonealdialysis:PD)が主に行われてきた。しかし,新生児へ使用可能な器械・器材の開発や進歩により,低体重児への体外循環による血液浄化療法が可能となった。それに伴い,溶質の除去効率にすぐれ,確実な水分管理が可能なことから,最近では低体重児への体外循環による血液浄化療法が増加している。
 しかし,新生児への体外循環による急性血液浄化療法に対する最適な施行方法はまだ試行錯誤の状態にある。比較的症例経験のある施設においても経験的な部分が大きい。新生児を対象に体外循環による急性血液浄化療法をまとめた報告は少なく,本邦でも各施設における小児・乳児症例のまとめに含まれた形で報告されているか,あるいは症例報告がほとんどである。ヨーロッパでのガイドラインや,米国,本邦での多施設データもやはり新生児に限ったものではない。
 新生児においては,PD や交換輸血なども,疾患や病態により選択されるが,このガイドラインは,新生児医療の中で体外循環を用いた急性血液浄化療法が安全に施行され,またその有効性を検証するために作成された。本邦は,低血流速に対応する血液浄化用装置,低容量のモジュール,出血の危険性が少ない抗凝固剤などが揃っており,欧米の推奨する方法やカテーテルとは必ずしも一致しない。そこで本ガイドラインでは,本邦での体外循環を用いた急性血液浄化療法の新生児報告例を中心に,エキスパートオピニオンとして提示した。急性血液浄化療法は本邦でも世界的にもエビデンスは少なく,特に低体重児に対しては確立した治療法ではなくリスクが高い治療法であることから,有益性とリスクをご家族に説明し理解していただく必要がある。しかしながら,重症新生児の救命や予後改善に寄与している可能性があり,本邦独自の器材・技術と高いレベルのNICU スタッフにより,本邦での症例共有とエビデンスを発信していくことが必要である。
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