学会について

理事長挨拶

2017年1月吉日

理事長 楠田 聡(東京女子医科大学母子総合医療センター)

理事長 楠田 聡

 先ず初めに、60年以上の歴史をもつ一般社団法人日本新生児成育医学会の概要を紹介をしたいと思います。本学会の前進としては、1955年に未熟児の会が作られ、そしてその3年後に開かれた第1回未熟児懇談会となります。これを本学会の第1回学術集会と数えております。その後翌年には、未熟児研究協議会、さらにその翌年には未熟児研究会と名称を変え継続して運営されています。しかも当時は、温泉宿に参加者が全員宿泊してどてらに着替えて討論する、別名「どてら会」と呼ばれる形態が取り入れられていました。教授を含めて参加者全員がどてら姿になることで、身分の隔たりなく自由に意見が言える会として運営されていました。その後、参加者が増えるにしたがい、「どてら会」としての運営は不可能となり、第7回からは未熟児新生児研究会と改称して通常の学会場での開催となりました。しかし、この「どてら会」の伝統はそのまま今も受け継がれ、新生児医療は皆が意見を出し合い、そして力を合わせて実践する医療だという考え方が基本として残っています。その後も会員数の増加が続き、1986年には日本未熟児新生児研究会から日本未熟児新生児学会になりました。そして、2015年には、一般社団法人日本新生児成育医学会となりました。1958年に第1回未熟児懇談会を開催して節目の第60回の学術集会を開催した年に、法人格を有する団体となり、さらに学会名も変更したことになります。2015年は、本学会にとって新たなそして大変重大な一歩を踏み出した年になりました。そして現在は、会員数も約3,000名で、日本小児科学会の分科会のなかで一番古く、そして最大の規模を有する学会となっています。

  本学会の歴史のなかで行われた法人化と学会名変更の理由を説明します。学会は、主に学会員の会費で運営され独立採算ですが、活動内容は、学術集会の開催、学会誌の発行、ガイドラインの作成、新しい治療法の開発等々、多岐に亘ります。したがって、学会の運営結果は、専門医療分野および社会全体に大きな影響を与えます。その影響力の強さを考えると、学会は一定のルールに則って厳格に運営される必要があります。そのため、専門家の単なる自主的な運営では十分な責任を果たせません。一方、社会からも、信頼を受けることが困難になります。そこで、本学会も法律で定められた規則に従って運営され、資金の流れも透明性を持って公表される法人格が必要でした。このような背景があり、一般社団法人の資格を得たのです。法人格を得ることは、社会的には一段格上の団体と見なされます。しかし同時に、責任も大きくなると考えてください。学会名を変更した理由は、新生児医療の内容の変化です。従来は、学会名に「未熟児」の名称を使用して、ハイリスク児の救命を最大の目的としていました。しかし現在は、ハイリスク児の救命率が向上するにともない、長期予後にも注意を払う必要がでてきました。もっと言えば、これらのハイリスク児の長期予後の改善がなければ、急性期の新生児医療の価値はありません。また、ローリスクの新生児については、必ずしも医療の対象ではありませんが、健康に育つようにサポートするのも新生児医療の重要な役割です。すなわち、全ての新生児の出生直後の急性期のみでなく、その後の健やかな成長をサポートする医療の専門家集団が本学会です。これらのことを考慮し、学会名を変更しました。なお、英語名は、Japan Society for Neonatal Health and Developmentとなります。名称の変更にしたがい、本学会がさらに発展すると考えております。

次に、本学会の課題について述べます。学会が発足してからの新生児医療の進歩は目覚ましく、発足時の1958年のわが国の新生児死亡率は、1,000出生に19.5人でしたが、2014年には0.9人と1.0を下回るまで低下しました。これは世界最高水準で、世界で最も母子に優しい医療を提供している国と言えます。しかしながら、救命できない児、後遺症をもって救命される児が存在することも事実です。また、医療施設入院中の新生児およびその家族の環境は決して世界一と言える状況ではありません。そしてなりより、新生児医療現場で働く医師、助産師、看護師、臨床心理士、理学療法士、臨床工学技士、薬剤師、ソーシャルワーカー等の人材も欧米に比べて少ない状況です。これらの課題は新生児医療の医学的な発展だけでは解決できません。やはり学会としての社会的活動も重要であり、そのためにも、本学会の法人化の力を社会に活かしていきたいと思います。

  最後になりましたが、2013年から本学会の理事長を勤めてまいりましたが、2016年の学会総会で皆様方にご賛同頂き再任されましたので、理事長としての抱負を述べさせて頂きます。本学会は、新生児医療の専門家集団として、高い使命感と幅広い見識を持って会員の皆様が活動できるように、理事長として引き続き支援していきたいと考えております。さらに、次の点について達成していきたいと考えております。まず、本学会の性質を考えれば、公益社団法人がより適した運営形態であると考えます。本学会の一般社団法人としての運営実績を着実に示すことで、公益社団法人の資格取得を目指したいと考えます。次に、学会の国際化です。すでに述べたようにわが国の新生児医療レベルは世界最高水準です。しかしながら、国際交流が十分でないために、この最高水準を国際的に活かすことができていません。学術集会、学会雑誌を国際化するとともに、わが国の新生児医療を世界にもっと発信できる体制を構築する必要があります。次に、課題でも述べた人員不足の問題です。行政および日本産科婦人科学会とも連携しながら、人材の確保を実現したいと思います。最後に、学会運営の若返りです。本学会が持続的に発展できるように、より多くの若手新生児科医に学会運営に携わって頂きたいと考えています。

 一人でも多くの新生児が健やかに成長し、家族にかけがえのない幸せを提供できるように、会員の皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

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